インタビュー 2020.12.18

会社員でも10万円前後から「エンジェル投資家」に。未来を共に描くベンチャー投資の魅力

2015年5月、株式投資型クラウドファンディングが解禁。これにより未上場のベンチャー企業への投資は、一般の個人投資家にも広く開かれたものになりました。「ベンチャー投資にはリターンを超えた魅力」があると言う株式会社日本クラウドキャピタル CMOの向井純太郎氏。同氏への取材を元に、ベンチャー投資の魅力に迫ります。

限られた富裕層のものだったベンチャー投資

「1000億円稼げる投資」なんて、怪しく聞こえるかもしれません。年収1000万円でも稼ぐのに1万年かかる途方もない金額。しかし、その金額をたった数年の投資で稼いだ人がいます。

PayPalの創業者でもあるピーター・ティール氏は、まだ創業間もなかったFacebookに50万ドルを出資し、同社の上場後に約10億ドルで売却。投資から売却までの約8年で約1000億円の利益を手にしました。

彼が約1000億円を稼ぎ出した投資は、いわゆる「ベンチャー投資」。上場企業に投資する一般的な株式投資とは違い、まだ未上場の企業への投資です。

しかし「ベンチャー投資」は、投資企業の上場する確率が1%以下とも言われるハイリスクもさることながら、最低でも数百万円の資金が必要。そして上場企業への株式投資のように投資先のリストが公開されているわけではないため、自ら企業とのネットワークを持つ一部の富裕層などに限定されるものでした。

そんななか、2015年5月に株式投資型クラウドファンディングが解禁。これにより一般投資家が小口でベンチャー企業に投資することができるようになりました。

日本初の株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営する日本クラウドキャピタル CMOの向井純太郎氏は次のように語ります。

向井:「株式投資型クラウドファンディング『FUNDINNO』は、簡単に言えば一般投資家でもベンチャー株を買えるというサービスです。

これまで、一般の個人投資家が投資を求めているベンチャー企業と出会える機会はなかなかありませんでした。またそのベンチャー企業がきちんとした事業を行っているのか、財務状況は問題ないのかなどを個人で判断するのはハードルが高い。

そこで、私たちのような関東財務局に登録した事業者が、基準に基づいて投資先企業の審査を行い、一般投資家に向けて情報を公開する。これにより、一般投資家の皆さんでも安心してベンチャー企業に投資できるようになったのです」

2020年12月1日現在

誰でもエンジェル投資家に。株式投資型クラウドファンディングの特徴は?

創業間もない企業へ投資する個人を、「エンジェル投資家」と言います。まだ実績が少ないスタートアップの可能性を信じて資金提供する。スタートアップ側にとってはまさに「天使」のような存在です。

個人で多額の資金を投資するのが「大天使」だとすれば、株式投資型クラウドファンディングは大勢の「小天使」を集めて同様の投資を行おうというもの。投資金額は50万円を上限に、10万円前後から投資できます。

スタートアップ企業からは新たな資金調達方法として期待がかかる一方で、投資家の目線に立ったとき、株式投資型クラウドファンディングとはどのような金融商品なのでしょうか──。

向井:「株式投資型クラウドファンディングによるベンチャー投資は、やはりハイリスク・ハイリターンなものです。投資先はベンチャー企業ですので、上場企業よりも経営基盤が脆弱です。そのため、倒産や解散のリスクはどうしてもついて回ります。

私たちがこれまでに仲介した125の投資案件の中でも、残念ながら3社が解散をしてしまいました。その場合、投資に対するリターンはゼロになってしまいます。(2020年11月末現在)

では、どのような場合にリターンを得られるのか。一般的に馴染みがあるのがIPO(新規公開株式)でしょう。上場後に株価が設立当初の数十倍になる可能性もあり、大きなリターンを得られるチャンスです。

ただ、まだサービスを開始してから3年しか経っていないため、FUNDINNOからはまだIPOをした投資案件はありません。

しかし、FUNDINNOの案件で、個人投資家の株を、法人が買い上げるというエグジット事例が2件あります。2件とも投資から約1年半で約1.5倍の価格で売却しています。年間利回りにすると33%はあります。なかなか利回り33%の金融商品はないですよね」

会社設立から上場までは7-10年ぐらいかかるのが一般的。あと数年もすればFUNDINNOの投資案件からもIPOの実績が生まれ始めるかもしれません。

また、ベンチャー投資で利益を得られるもう1つの方法が未上場株の売却です。投資した企業がM&Aで買収される際に、既存株が高値で買い取られるケースがあったり、FUNDINNOのエグジット事例のように相対取引で株式の一部のみ売却するというケースもあります。

とは言え、上場株のようにいつでも売却ができるわけではなく、その点がベンチャー投資のリスクの1つでした。しかし、日本クラウドキャピタルは2021年に未上場株の売買ができるオンライン市場を創設する予定とのこと。 0か100か──、だったベンチャー投資の世界に売却の新たな選択肢が増えることで、ベンチャー投資は今より低いリスクで取り組むことができるようになるのです。

投資家として、ファンとして。企業を応援する醍醐味

ベンチャー投資にはハイリスク・ハイリターンな金融商品という他に、もう1つの側面があります。先に紹介したピーター・ティールはFacebookへ投資する前から、PayPalの売却により50億円以上の富を得ています。また、Facebookへの投資後もTesla Motors、Space Xなど数々の投資に成功しています。

一生暮らせるだけの富を持つピーター・ティールがなぜベンチャー投資を行うのか? エンジェル投資家のなかには、お金を儲けるだけでなく、投資先企業の成功の先にある社会的な意義を見出だすという人もいれば、起業家の人柄に惹かれたから出資するという人もいます。

「世界がもっとこうなったら良いのに」「この人の力になってあげたい」。そんな想いを投資先の企業を応援することで託しているのです。

そしてそれは株式投資型クラウドファンディングにおいても同じだと言います。

向井:「1つの案件に平均200名ほどの投資家さんがいらっしゃいます。上場企業の株主の数と比べると、圧倒的に数が少なく、その分経営者との距離も近くなります。

ベンチャーキャピタルが投資する際も、ハンズオンという経営のサポートとセットで資金提供をするケースがあります。株主型クラウドファンディングの場合もそれと同じようにさまざまな形で事業に貢献することができ、その成長を間近で見ることができます。

半分は投資家だけれど、もう半分は投資先企業のサービスのファンという方が多いですね。もちろん金融商品として魅力を感じて投資をされる方もいらっしゃいますが、FUNDINNOで投資する多くの方の目的は『応援』なんです。

株主総会やミートアップイベントを通じて直接経営陣とコミュニケーションを取れる場合もあります。一般的な金融商品だと投資して終わりなのですが、株主型クラウドファンディングの場合はそこから好きな企業やサービスを応援しながら関係性を深めていくことができるのです。

実は投資先企業にも株主がどういうスキルセットを持ってらっしゃるかサーチできる機能があり、そういった相談が企業から株主に届くこともあります。株主の方が投資先企業の事業そのものをお手伝いするケースや、取引先を紹介したというケースも。

ここらへんが他の金融商品にはない、株主型クラウドファンディングの醍醐味の部分ではないでしょうか」

あなたの未来を見通す力が問われる

FUNDINNOに掲載されているさまざまな投資案件。そのなかからどういう基準で投資先の企業を見ていけば良いのか。

向井:「私たちの企業には多くの会計士が在籍し、投資案件の掲載にあたっての財務諸表や事業計画の審査を厳正に行っています。その審査を通過した企業のみを掲載していますが、そのなかでどの企業を選ぶかとなれば、まず自分の畑に近い企業さんを選ぶのが良いかもしれません。業界の動向もわかりますし、その企業の将来性も予測しやすい。

上場企業への株式投資には、株価収益率などさまざまな指標があります。主に過去のデータを元に投資を検討することが多いでしょう。

でもベンチャー投資の場合は、見るべき過去があまりないケースが多いですから。言ってしまえば未来しかない。だからこそベンチャー投資には未来を見通す力が必要なんです。

まったく新しい領域のものもあり、そうなるともう自分で判断するしかないですよね。20年前に、アマゾンがここまでの企業になると誰が思っていたでしょう。

自分の未来への視座が求められる。それがベンチャー投資の難しいところであり、面白いところなんですよね」

FUNDINNO(ファンディーノ)

取材協力:FUNDINNO

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

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