ニュース 2020.08.21

SBIグループの取り組みに見る日本国内のSTOの動き

この度SBIグループが決算会見でSTOに関する発表を行いました。全体に対するボリュームは大きくはないですが、今後の日本国内のSTOに関する動きがうかがえる非常に興味深いものになっています。

今回はこのニュースを中心に、日本国内のSTOの動きについて詳しく見ていきましょう。

その前にSTOってなんだろう?

近年、金融ニュースなどでSTOという言葉をよく聞くようになりました。STOとは「Security Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)」の略称で、ブロックチェーン上で発行されたトークンを使用した資金調達方法のことです。

この中のセキュリティとは「証券」の意味で、つまりセキュリティトークンとは「有価証券の機能を付与されたトークン」ということです。

有価証券とは株式や債券、為替手形や小切手、不動産など。STOでは、法規制もこういった有価証券と同等に扱われるので安全性が高く、新たな資金調達手法として、SBIグループを始めとする金融業界各社がエコシステムの整備を進めています。

日本国内のSTOの状況

2019年5月31日に法改正、2020年5月1日に施行された新しい金融商品取引法によって、これまでグレーとされていたトークンを用いた資金調達が、日本でも正式に規制対象であるということが認められました。

これを受けてSBIホールディングスなどSTOの市場成長を支援する銀行が集まり、一般社団法人日本STO協会を設立。2020年4月に自主規制団体の認定を取得しました。

自主規制団体とは

特定の業界において法令でカバーできない部分のルールを作ったり、それに違反しないように監視を行う団体。金融業界においては、その公正さや透明性を高めるために活動を行います。

一般社団法人日本STO協会

正会員(11社)

SBI証券SMBC日興証券
auカブコム証券大和証券
東海東京証券野村證券
マネックス証券みずほ証券
楽天証券三井住友信託銀行
三菱UFJ信託銀行

その他34社がSTO発行を支援する賛助会員として加入済み(2020年8月現在)

日本国内では、その他にも一般社団法人日本セキュリティトークン協会(JSTA)という団体が同じく活発に活動しています。こちらは複数の不動産会社、デロイトトーマツなどのコンサルティングファームが参画し、「空き家利用の投資」など不動産業での実証実験を行っています。

STOの応用例

今回SBIグループが発表したSTOの応用例に「不動産」「ファンビジネス」が取り上げられていたので、この二つについて詳しく見てみましょう。

不動産

とくに日本国内においては個人の不動産投資が一般的ではなく、不動産市場の流動性は十分であるとは言えません。そこでSTOを利用することによって、トークン化された小口商品を通して一般投資家からも資金調達ができると期待されているのです。

ファンビジネス

ファンビジネスにトークンを取り入れると、従来は「試合やコンサートを見に行く」「グッズを買う」などであくまでもサポートするだけの存在であったファンが、運営に間接的に関われるようになります。保有するトークンによってロイヤリティが高まることにより、ファン層のさらなる強化につながります。

想像してみてください。トークンを保有することで、応援しているスポーツチームが成功した時にリターンを得られるとしたら、もっと応援したくなりませんか?

STO市場の発展が望まれるのは、このように既存の有価証券にはない自由度の高い設計での資金調達が、低コスト・短期間で行えるようになるためです。

ibetの開発と提携

さて、今回の発表の中でさらに興味深い話があります。昨年、野村ホールディングスと野村総合研究所が出資して設立したBoostry社がSTOの発行と取引ができるibetというプラットフォームを開発しました。今後このibetにSBIグループが10%の出資をすることを決定したというものです。

参照:野村HDとSBIがSTO分野で提携

この提携により、各社がそれぞれ保有するブロックチェーン技術や人的リソースを活用したさらなる実証実験が加速すると予想されます。

SBIグループの発表から見える今後の展望

今回お話ししたように現在は金融機関が主となってSTO市場の整備に力を入れていますが、市場を発展させるにはまだまだ十分な基盤が出来上がっていません。市場に流れを産むには、発行を行うプライマリーマーケットだけでなく、所有している証券を一般投資家が自由に売買できるセカンダリーマーケットなど、関連するエコシステムが必要不可欠です。

今回のSBIグループのSTOに関する発表の中で、一番重要な点がこのエコシステムに関するものでした。

先述の野村ホールディングスの取り組みに加え、SBIホールディングスもSTO市場の拡大を目指したセカンダリーマーケットの整備に向けてSTOを取扱うPTS(私設取引システム)設立の検討を始めたのです。SBIグループは既にSTOプラットフォームを完成させた米国のTemplum社などに出資をしています。

日本国内のSTOはまだ夜明けを迎えたばかりですが、最近のこういったニュースでもわかるように確実にその歩みを進めています。積極的に日本国内のSTO推進の取り組みを進めるSBIグループの動きに、今後も注目していきましょう。

関連リンク:SBIグループ第1四半期決算

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

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